
私が整形外科医となり、脊椎外科を専門にしたのは自分の意志ではない。私を知る人々の半ば強引な勧めを拒まなかった結果である。あれはしかし、天啓でもあったろう。医療の要諦は、私は、人の苦しみを抜くものであると思い定めている。誤解を懸れるが、医療が人の命を救うものであるとは考えない。本来それは神の領分であろうし、言い募ればむしろ医者の倨傲ですらある。そう思い定めたとき、本意ならずして選んだ整形外科、就中 脊椎外科医の天職こそは最も我が意に沿うものであった。
しかし、医者として三十余年の間、良く人の苦しみを抜き得て来ただろうか?拙い技や未熟な心が、苦しみに苦しみを重ねたことはなかったか?顧みれば、忸怩たる思いに身の遣り場が無い。さりとても、病院を開いてこの方、私は自らをコマに擬すれば低く唸りつつ力強く回り続けてきたとの自負だけはある。今や往時に比し人も物も備わって十全に近い。これからも、心の軸を正位置に据え、より静かに、より力強く回り続けよう。
結びとはなったが、これまで私を導き育んで下さった恩師の方々や多くの先輩諸賢に深甚の謝意を捧げまつる。